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思うこと 面白かった本

テレワークの日々

 このところテレワークが続いています。
黙々とPCに向かい、ほとんど会話のない毎日です。
まだ、仕事に慣れていないし、新しい部署のため、何をするのか模索中でもあり、
たまに集中してメールが来ますが、基本的にはやるべきこと、覚えなくてはならにことを
探している状態です。
暇といえば、本当に暇ですし、毎日の達成感もない。
他の部署の同僚と仕事がらみのおしゃべりが、唯一の息抜きです。
身体は楽ですが、もう少し仕事が固まってからテレワークが理想かな。
でも、それは贅沢な話かもしれません。
何しろ、状況の悪化が激しいので通勤のリスクを考えるとテレワーク中心なのは有難いです。

タイトル:「ゆがんだ正義感で他人を支配しようとする人」
著者:梅谷 薫 講談社 2016年3月
ISBN:9784062729338

 最近、非常に残忍な手口での殺人やその罪について良心の呵責を感じていないと思われる人が
とても多いように感じていました。
そこで、上記の本を読んでみたというわけです。
心理学的には、昔から研究はされてきていて、様々な実験も行われてきたことがわかります。
その結果、最近急に冷酷な人が増えたわけではなく、昔から存在していたし、問題視されてもいたこと、それに一定の割合で必ず存在し、傾向の度合いに強弱があり、皆が犯罪者であるわけではない。
むしろ成功者として幸せに暮らしている人もいる、という驚き。
もしかしたら、多くのサイコパスと呼ばれる人々は、今まで時代の闇や表面上の好景気などに隠れて見えにくかっただけなのかもしれません。
このところのコロナ禍で、多くの人が不安になり、またSNSの発達で匿名で情報発信ができる手段が一般化したことで、不満の解消や人を支配したり、困らせたりすることに快感を感じる人が
多くの普通の人々の注目を浴びるようになったのかもしれません。
この本では、様々な日常のシーンごとに実例をあげ、対策を述べていますが、とにかく自分を見失わないこと、問題のある人に関わらないこと、逃げることも選択肢にいれること、を上げています。
どうしても逃れられないときは、ひたすら我慢しかない、とも言っています。
逃れられないとは、家族や職場、ご近所ですが、これは本当に苦しい。
問題のある人が本当に欲しいのは、他人の人権や自由なのです、という一文がとても辛い。
その通りだけれども、それに気づくまで、なんでだろう、どうしてだろう、
と悩み苦しんだ自分がなんとも哀れで、悲しい。
考えてみれば、自分の周りにはいつも他人を不快にさせる行動をする人がいたことに気が付きました。
その時は、自分が何か至らなかったせいかな、落ち度があったのかな、
気分を害するようなことを言ったのかな、と自分を責めていました。
でもそれは、違っていたのだと思います。
ただ単に、人より優位な立場にいたい、あるいは妬みや嫉妬など、
こちらには無関係な事情から生じた行動や態度だったのです。
この先、コロナ禍がどのように収束していくか、わかりませんが
目に見えない危険がウイルスだけではなく、人の心の中にも潜んでいることを
十分に認識して自分を守ることを第一に考えていこうと思います。

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思うこと 面白かった本

今年も残りわずかです。

 今年は春先からコロナに翻弄され続けています。
見えない相手にマスクや消毒、こまめな手洗い、人と距離を取って行動する、なるべく外出しない…、という手段で対抗してきました。
そして今まで普通だったことが、とても貴重なことになりました。
友人と一緒に時間を過ごすこと、大勢で舞台や音楽を楽しむこと、どこにでも誰とでも自由に行き来できること。
これからは何が重要で大事なのか、意識して選択し行動することが自分や大事な人を守ることにつながります。
自分も人も大事にしていきたいと思います。
さて、読書です。

タイトル:「禅 シンプル生活のすすめ」著者:枡野俊明(曹洞宗徳雄山建功寺住職)
株式会社三笠書房 2009年7月
ISBN:9784837977971

仏教の教えを日々の暮らしに役立てたい知恵が詰まっています。
あれこれ声高に理詰めで語るのではなく、とても簡潔に簡素な文章です。
実践を継続すれば本当に良いのですが、なかなかどうして難しいものです。
それでも、こうした知恵は時々とても読みたくなる、取り入れたくなる、ものです。
特に今年のようにあらゆることが変わり目となった時には。
自分に少し余裕を持たせて、来年は穏やかな良い一年になりますように。


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思うこと 面白かった本

愛情?

 このところ、11月とは思えないような暖かさ(えっ 暑い?)が続いています。
寒いのが苦手な私にとっては、大変喜ばしいことです。
とはいえ、もうすぐ冬が来るのですから、このような気温はそう長くは続かないでしょう。
冬には冬の楽しみ、喜びがあるのも、わかってはいるのですが。
例えば、鍋の美味しいこと。キリリとした空気に白い息を吐きながら歩く楽しさとか。
よく見てみれば、ほんの些細なことも気持ちをほぐしてくれるんだな、と最近よく感じるようになりました。
忙しさに紛れて、いつも心配事ばかりで頭がいっぱい、という状況は今もそう大きくは違わないのですが、テレワークになると本当に外に出る時間がなくなるので、意識的に朝15分程度散歩をすることにしたのです。
やってみるまでは、そんなに大した影響はないと思っていました。時間も短いので遠くまで行かれないし、ゆったり歩くので運動にもならないし。(たしかに運動にはなりません。これは明白。)
けれども、すこーし気持ちが緩むようなのです。近くの川辺を歩くだけですが、日によってシラサギがいたりして、毎日見える風景が違うのです。当たり前といえば、当たり前ですが。
でも、私はそんなことも忘れていたのです。余裕がないのですね。
これからは意識して、自分を労わることを優先したいと思っています。
皆さんも、どうかお試しください。ほんの小さなことでよいのです。
さて、今度はエッセイを読みました。

タイトル:「小さな幸せ46こ」 著者:よしもとばなな
中央公論新社 2018年6月 ISBN:9784122066069

このエッセイの中に、著者がたくさん動物を飼っていることを知りました。
幼いころから、さまざまな生き物に接してきたそうです。
当然、生き物との出会いも別れもたくさん経験されています。
そうした文章のなかに、犬や猫など家の中で一緒にいることが多い動物は
特にいつも飼い主を見ている、というのです。
だから、いなくなってしまうと空虚な気持ちとともに視線がないことに
胸を突かれる、見ることは彼らの愛情そのものと感じた、という趣旨でした。
愛情は、見ること。とても説得力があると思うのです。
関心があるから見る、気に掛けるから見る、見るからその人の心のあり様が少しわかる、
見ることで手を差し伸べることができる。
これからは、見ることを意識していきます。



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思うこと 面白かった本

冬 近し。

朝晩、だんだん冷えてきました。その分空気が澄んできて、キリっとした風景に出会うことが多くなりました。
なんというか、建物や山の輪郭がくっきり、はっきり見える気がするのです。
寒さは、大の苦手ですが、この空気感は好きです。皆様は、どんな空気感を感じますか?

こんな本を読みました。

タイトル:「子どもの本から世界をみる」
著者:石井郁子 他6名 株式会社かもがわ出版
2020年9月 ISBN:9784780310955

サブタイトルに「子どもとおとなのブックガイド88」とあり、絵本や物語、ドキュメンタリーから詩まで、児童書を紹介しています。児童書とはいっても、対象が中学生のものもあり、もちろん大人にも、というか自分も読みたいと思う本が多くありました。
(お勧めされているのはやはり大人、です。)
時代が変われど、子どもの気持ちは変わらない。子どもはとても純粋だけど、時にとても残酷だったりします。でも過酷な状況を乗り越える精神と知恵と体もあります。
子どもだからと言って一人前に扱わないのは、その子の将来に大きな影響をもたらす気がします。
本の中の冒険や主人公の気持ちは、読み手が主人公に重なってしまう感じがすることもあるでしょう。同じ本を読んでも皆同じイメージで物語を解釈しているわけではなく、視点が違うので感動する箇所や面白いと思う場所が違う。
読書っていいな、と思うところです。
それにしても、かなり重い内容の本が紹介されています。
読書感想文など求められない大人になると、ノンフィクションなどは問題意識が余程ないと手に取らない分野ではないでしょうか。
現代の闇、普段の生活の中の矛盾、理不尽な状況…。過去の過ち、でもそれは終わっていないし、終わりが見えない。

たくさんの児童書の批評を読んで思ったのは、世の中が便利になっても、太古の昔から人の心が大事なことは変わらないし、尊重しあうことを一番にしなければならない。
そのことを今このコロナ禍で学んでいる最中です、私。
ある一文が心に残っています。

「明るい希望 それは他者から手渡してもらうものではなく、自分を照らす力のことだと、どうか、あなたも信じてほしい。」

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思うこと 面白かった本

「本」について

 この10月は散々なひと月でした。
実は転職をして心機一転頑張るぞ! と思っていたのに
1週間したら、細菌性腸炎に罹り熱がでてしまい、1週間寝込んでしまった。
けれども実は1週間も寝ていたのに、のどだけは治らず咳と声枯れがひどくて
出勤してもクタクタ…。
それに咳というのは、出始めるとしばらくで続けるし、コロナ禍の影響で
少しでも咳き込むというと、冷たい視線、そっと席を立つ隣の人、など
本当に辛いものでした。おまけに咳き込むと体力を消耗します。
なかなか改善せず、テレワークになったのを幸いに、昼休みを勝手に延長して
耳鼻科に行き、そこでの薬が効いてずいぶん楽になりました。
よほど、体力が落ちているのだなと実感しました。
疲れがたまっていることにも無自覚でしたが、本当は体は悲鳴をあげていたのかもしれません。
体力や体調を過信せず、これからは労わりながら生きていかなくては、と改めて思った次第です。
皆様も、ぜひご自身の体の声に真剣に向き合って欲しいと思います。


タイトル:言葉の贈り物
著者:若松 英輔  2016年11月
株式会社 亜紀書房 ISBN:9784750514901

この本はタイトル通り、言葉についての考察がメインに語られています。
そして「言葉」と深く関係する「本」にも触れていて、これにハッと驚かされました。
著者のお父さまはずっと「本」を収集するのが趣味で、
晩年目が悪くなっても購入するのをやめなかったそうです。
収集 というくらいですので、1冊や2冊ではなくひと月に数十万円…。
子どもたちで話し合ってやめさせようということで、著者がお父さまを説得したそうです。
けれども、やめなかった。
後年、その話をふと友人にしたら、「本」そのものの存在が大事だったのでは、と
言われたそうです。
「本」はその中身や装丁などに目が行きがちですが、
「本」そのものが語っていることもあるのでは、いうのです。
「本」のたたずまい、「本」の匂い、その存在感…。
なるほど!と思いました。これは電子書籍にはない魅力でしょう。
多くに人が関わって出来上がる「本」の醍醐味でしょうか。

「本」は読まねばならぬ、と思い込んでいましたので、目からうろこ、でした。

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久しぶりの本

台風のあと、めっきり「秋」めいてきました。
今年の夏も猛暑でしたから、体力が本当に落ちました。コロナ騒ぎで外出する機会は減りましたが、暑さは家にいても、なかなか手ごわい。空調も日差しが家の中まで届く時間帯には、まったく涼しくなりません。歩かないから筋力が落ちる、食欲も落ちる、寝苦しくて睡眠不足…。
でも、今年は早く気温が落ち着いてきて、助かりました。
いつまでも暑い関西方面は、本当に大変だと思います。
もう少しで「秋」本番です。あと少しの辛抱です。

タイトル:〆切本 編者:左右社編集部
左右社 2016年10月
ISBN:9784865281538

タイトルにある通り、〆切に苦労している作家と編集者の話です。ほとんどの作家が締め切り間際に話を紡ぎだしていることを知りました。計画通りに筆が進まないだろうとは察していましたが、ホテルに「缶詰め」になることも、誰かのエッセイで読みましたが、いやはやすごい攻防です。
そんな中、きっちり〆切を守る方も少数ながらいらっしゃるようです。でもなぜだか、〆切を破る作家の作品の方が上質なものに違いないという編集者の思い入れがあるらしく、キッチリ派は重宝されつつ、居心地がよくないようです。でも、本を作るという仕事には多くの方々が関わっており、デジタル化が進む世の中であっても、なんだかとても人間臭い感じです。よく考えると週刊誌や月刊誌の連載を何本も持っている作家ですと、〆切が相次いでやってくるわけで、どれがどの話だったか、登場人物を間違えないのか、不思議ですよね。でも、その取り違えをやってしまった方もいらっしゃるそうで。
そんな話に、なせだかホットします。それでも、仕事には締め切りは絶対に必要でしょう。
なければ、だれも仕事しません。断言できます。

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思うこと 面白かった本

時間とは?

 9月になって急に季節が変わり始めた感じがします。
これから台風の影響が心配です。まるで熱帯の国にいるかのような、強烈な雨や生ぬるい風、とうとう温暖化が身に迫っております。
日本でも台風警報が必要ではないでしょうか?香港などではレベルによっては商店会社は休業、学校も休校、もちろん公共交通機関も止まり、嵐が過ぎるのを待つしくみがあります。食料の買い出しなど慌ただしくて、大変ではありますが、嵐の中を移動する危険はぐっと減ります。でも、お金さえだせば、タクシーは使えるようでした。(そもそも走っているタクシーを見つけるのが至難の技ではありますが)
今度の台風、あまり暴れないでほしいと思います。被害が最小限で済みますよう願っています。


タイトル:「大人になると、なぜ1年が短くなるのか?」
一川誠 池上彰 宝島社 2006年12月 ISBN:9784796655750

あなたも感じたことはありませんか?子供のころは時間がゆっくり感じられて、なかなか時計が進まないと思っていたのに、年を取ると1年があっという間に過ぎ去っていく…。
上記の本は、その謎に答えてくれる本です。とはいえ、時間とは何か、いまだに合理的な説明はなされていないのだそうです。意外…。
物理学、哲学、心理学、さまざまな学問からのアプローチがあるそうですが、この本は認知科学から「時間」を研究している先生が今現在の研究成果を池上彰さんとの対談で語られたことを本にまとめたものです。確かに物理的に正確に時を刻む時間とは別に人間が体感する時間は伸びたり縮んだりしているように思います。楽しい時間はあっという間、退屈な時間はイライラするほど長い。
実際、主観的な時間というものがあって、時計を見ずにカウントもしないで1分を測ると、物理的な時間に対して自分の時計は進んでいるか、遅れているかがわかるそうです。遅いと代謝がおちている可能性があるので疲れているのかもしれません。体調管理が必要です。また進んでいるのならば、物理的な時間に対して余裕があるので、時間のコントロールがしやすいということです。

時間は皆に平等に流れているものと思っていましたが、実はその捉え方は人それぞれで、同じ人でも日によって、体調によって、時間の長さが違って感じられる。だから自分と同じ時間の使い方を人に強要しないことが大事なんだと知りました。そして「豊かな時間」というのは、決して好きなことをしている時間だけをいうのではなくて、しなければならないことを効率よく済ませて、好きなことにも時間を使える、まさに自分のために時間の使い方をカスタマイズすることなのではないでしょうか。目からうろこの本でした。

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面白かった本

暑くても読みます。

うだるような暑さが、続きます。近くの公園では、毎年「みみず」が土から這い出して乾燥して死亡しています。たぶん、土の中も異常な暑さで、たまりかねて外に這い出すけれど、今度は日差しと温度で乾燥してしまうのだと思われます。本当に気の毒な「みみず」たちです。虫にもこんなに危険なのですから、人間だって油断していると危ないと思います。
どうぞ、皆様も水分補給と良質な睡眠を心がけてください。
さて、読書の成果です。

三越日本橋店のディスプレイです。
涼しげでしょう?

タイトル:「ダブル・フォールト」 真保 祐一 著
株式会社 集英社 2017年10月 ISBN:9784087456431

新人弁護士の成長物語です。法律の知識を少し知ることができるし、弁護士の実状もリアルです。
そういえば、以前「弁護士ドットコム」というサイトで弁護士さんを探したことがあるのですが、大きな事務所から、一人でマンションの一室で事務所を構えて営業されている方もいて、まさに競争が激しい感じでした。このサイトでは、たしか24時間いつでも弁護士さんに相談できるのところがあっって、すごいと思いました。誰でも受け付けているわけではなかったと思いますが。
至急、どうしたらよいか、知りたい時には、とても便利です。

 物語は、最初のうちは展開がゆっくりで平凡そうな事案に思えますが、後半になると急に伏線が繋がり始め、事件の全貌が明らかになって、そして思いがけない結末を迎えます。
善行ばかりの人も、極悪非道だけの人もいないけれど、悪行は歯止めがないと底知れない深さを感じるものです。
それだけに被害者なのに悪行が明らかになると、急に自業自得という言葉通りに世間は考えるし、身内さえも、そんな思いから抜け出せない。いくら家族には優しかったとは言っても、外での振る舞いは家族の想像を超えたひどいもので、一生罪の意識を背負わなければならない…。本当に?
問われているのかもしれません。 
罪は犯した人のもの、家族までもが背負わなくても良い、と割り切れるものか?
弁護士といえども、法を犯す寸前まで追い詰められたら、どうするのか。
何でもありの昨今で、健全な倫理観というものは存在するのか?
心もとない気がするのは、私だけでしょうか?



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暑いデスねえ…。

 梅雨明けから、突然夏本番で身体が付いていかない感じあります。
夏、というのは湿度が高いせいか、空気が濃密に感じられます。
その分、やっぱり暑さを感じやすいのかもしれません。
最近は「暑さ」も危険になりました。
暑いけれども、読書です。

読書といえば、夏休みの読書感想文の宿題を思い出します。
今でも、すぐ読めるほど短くて感想を書きやすい本を紹介してほしい、という声をよく耳にします。私もそのような人でした。
そこである時、カフカの「変身」を選んだのでしたが、これが難しかった。
何しろ、話が奇想天外。「ある朝、私は虫になっていた」という感じだったと思います。
どんな感想を書けばよいのか?
正直にありえなーい、と言ってしまいたいけれど、そんな感想を書く勇気を持てませんでした。
もっと真面目な、それらしい感想を書かなければいけない、という気がして。
今は、好き勝手な感想を言えるようになって、本当に解放された気分です。
感想文というのは、強制されて書くのはつまらないですね。
文章を読む力、書く力はつくのかもしれませんが、苦手な人は「本」の魅力に気が付かずに
嫌になってしまうのではないでしょうか。


光が降り注ぐ林

タイトル:「弥勒の月」 あさの あつこ著
2019年1月 光文社 ISBN:9784334744564

久しぶりに時代小説を読みました。この作者は「バッテリー」という作品で知りました。
そのため中高生向きの作家だと思っていました。
作家というものは、どんな題材でも書ける力があるんですね。
プロなんだから、といえばそうなんですが。
それほどこの「弥勒の月」は完成度が高い作品だと思います。謎解きの面白さ、人間描写のすばらしさ、物語がすんなり運ばれていく、構成のすばらしさ。
物語の途中で、時系列を変えることによって、場面転換をして話や人物の背景を説明する、うまい方法だと思うのですが、時によると本筋との関係がわかりにくくなる、というリスクもあると思うのです。けれども、このリスクも上手にクリアして、違和感なく読み通せます。また、エンターテインメントでありながら、人間心理の奥深さも描かれていて、読みごたえも十分です。

 

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ついに、セミの大合唱!

ようやく梅雨が明けて、待ってましたとばかりにセミが元気に大合唱です。
聴こえなければ寂しいし、鳴けばうるさいと思う、本当に人間は勝手なものです。
夏本番ですね。


今回は軽く読めた本のご紹介です。
ミステリー寄りのエンターテインメントです。
題材は「もののけ」などで昔は目撃談が多かったけれど、最近めっきり消息がない、あの方々です。実在するのか、しないのか、もありますが、その起源や言い伝えは歴史があって、根拠があるといえばあるし、ないといえば存在そのものが疑わしい。
でも、そのような学術的なことはさておき、とても楽しく読みました.

タイトル:「逢魔が時に会いましょう」 荻原浩 著
㈱集英社 2018年4月 ISBN:9784087457223

物語は、女子大生と民俗学の准教授が主人公ですが、大学生の真矢の視点から物語が進みます。
そこが楽しく読めるポイントです。
河童も天狗も座敷童も全く知らないし、興味もない大学生だから、准教授の解説がわかりやすく語られ、納得できるのです。それに女子大生の真矢の方が男勝りで、准教授はナヨっとひ弱な感じ。
でもいざとなると、頼りがいのある良い先生という性格設定が、楽しいやり取りにつながってスラスラ読めてしまいます。
夏のお暇なときにおススメです。