「マティス」の最晩年の作品でロザリオ礼拝堂です。これは新国立美術館に再現された礼拝堂の内部です。太陽の移動に伴ってステンドグラスの光も移動します。配色もデザインも違うステンドグラスが光の移動とともに移ろっていきます。
明るい配色が、荘厳なイメージの礼拝堂を気軽に入りやすい雰囲気にしています。
一方で、キリスト像はシンプルなもので、
それが宗教の本質を表しているようで、
現代の宗教の在り方を示唆していると感じられました。
この展覧会を見てから、ずいぶん時間が経ってしまいました。
ものがたり 2
さみだれ君のことが気になっていました。
薫はさみだれ君とおしゃべりをしたり、
ダンスを踊ったりしていると、
とても素直な気持ちになれました。
背伸びをして、
わかりもしないことを知っているかのようにふるまったり、
難しい言葉を使わなくても、楽しく過ごすことができました。
さみだれ君との他愛のない会話のキャッチボールが
とても楽しかった。
会話の中に
さみだれ君の家族のことが出てきても、
最初はそれほど気に留めなかった。
けれども、楽しい会話の合間に
さみだれ君の優しい眼差しに見つめられているうちに
薫の心の中にさみだれ君がどんどん流れ込んできました。
さみだれ君の心の中を見ることは誰にもできません。
けれども、薫に向ける視線や
うれしい気持ちをダンスに表現してみせてくれたり
ちょっとしたことでも「ありがとう」と返事をしたり
雨の日に会えた時の喜びの笑顔は
言葉にできないほどうれしい気持ちにさせるものでした。
だから
気持ちを言葉にしてお互いに確認したわけではないけれど
心は通じ合っていると
そう思っていました。
今でも、どこか深いところで
心は通い合っていると薫は思っています。
けれども、さみだれ君には愛する家族がいます。
薫と出会うずっと前に、
素敵な女性と熱烈な恋をして家族になりました。
そして神様から子どもを授かりました。
さみだれ君は愛する家族のために、
異国の地で働くことを選びました。
こんなことも、
さみだれ君は薫に語ってくれたのです。
それでも、二人は出会ったのです。
雨降りの日に。
ただでさえ、鬱陶しい雨の日に。
そして、なぜか雨の日にしか会えない。
不思議な二人なのです。