世界中で問題になっているDVですが、意外に、精神的な虐待であるハラスメントは、本人も周りの人も気づかないことが多いのです。生命の危機である身体的な暴力は、わかりやすいので理解や協力が得られますが、ハラスメントはただの夫婦喧嘩と受け取られがちです。けれども、こちらも加害者から逃れた後も、心が安定しないとか、自分の気持ちをどのように、どうやって、どこまで、他人に伝えたらよいのか、混乱してしまうということが多々あります。いつも自分に落ち度があるのではないかと考えてしまいます。自分の考えをどんな言葉で伝えれば理解してもらえるのかわからなくて、特に意見が違うときに、言うことすら止めてしまう。ひどくなると仕事上のことでも、連絡事項をうまく伝えることができなくなり、その結果周りの人たちから、コミュニケーションが取れない、協調性のない人間と思われてしまいます。仕事という「公」と自分のこと「私」の区別が、理屈としてはわかっていても、行動が伴わない。こうして居場所をなくしていきます。
ハラスメントの沼は、深くて暗いと思います。
常に相手にどう思われるか、このことばかり考えてしまい、かえって皮肉なことに自分本位なコミュニケーションになってしまいがちです。自分の正直な気持ちを素直に言ったりしたら(特に相手に「嫌」だとか「できない」だとか)まずいのではないか、と思ってしまう。
だぶん、自分が信頼されるには、まず相手を信頼することから、始めなくてはなりません。ハラスメントを経験した人には、この相手を「信頼」することが難しいのだと思います。もちろん、お付き合いの程度(仕事上の関係なのか、友達なのか、近所の知り合いなのか)によって、信頼の度合いが違うとは思いますが。
心の傷は、外から見えません。それだけに苦しい思いを抱えているのです。
本当に、どうしたらよいのか…。
少しづつでも解決していけたら、というのが今の願いです。